滋賀県立大学 国際交流新棟建設計画(2011)
木原 己人 所 洸太 他
本施設は国際コミュニケーション学科開設に伴う学生定員の増加に対応するための中講義室の増設、全学共通教育推進機構の特認教員室および学習相談コーナー、学生の自学自習を促進するための自習室を整備する。あわせて、同窓会の負担により、学生の就職やインターンシップ等にそのネットワークを活用する同窓会館を建設整備する。
学生Aチーム案
本施設は国際コミュニケーション学科開設に伴う講義室等の施設の増設、及び学生の就職やインターシップなどにそのネットワークを活用する同窓会館の建設を目的とする。施設の計画にあたっては、滋賀県産の製材を用いることが求められた。本施設では木格子屋根による木造空間を提案する。建物の平面は要求された諸機能を合理的に納めるため、矩形の平面となっている。それに対して曲面屋根はHP 曲面となっており、直線材を直行方向に組み合わせることでつくられている。そのため平面形態に対して、合理的に屋根構造を架けることが可能となっている。内部は柱梁をあらわしとし、仕上げを木格子天井や無垢材のフローリングを使用することによって、線的で軽快な木質空間をつくっている。大きくめくれ上がった特徴的な曲面屋根は、県立大学のデザインコードを踏襲しながらも、オリジナリティを持った外観を与えている。
学生Bチーム案
本施設は国際コミュニケーション学科開設に伴う学生定員の増加に対応するための新施設である。しかしそれだけではなく、学生同士や地域とのコミュニケーションの拠点となり、また学生の就職やインターンシップ等にOB・OG のネットワークを活用できる機能も同時に必要とされている。
本施設は滋賀県立大学で初めての木造校舎であるため、木造のこの施設が滋賀県の新しいシンボルとなるようデザインした。
建物の開口部を各部屋の隅を筋交いに沿って三角形に切り上げることで、視線が抜ける開放的な校舎になるよう計画し、壁と開口部が一体となるような意匠と構造を考えた。各部屋の接する内壁の角は部屋同士が直角に接して互いに支え合うことで、真ん中に柱が落ちない自由な空間とすることができる。三角形に切り上げているので、各部屋の活動が一つの空間に収まらず周囲に開かれていくことで、施設全体の活動が繋がっていくように計画した。
屋根はHP シェルを採用することで大スパンの屋根を架けることができる。各辺を1本の製材ではなく間伐材を9 本束ねて継いでいくことで、シェルの一辺をより長くすることができた。また屋根をシェルにすることで各部屋は曲線の天井になり、ハイサイドライトからのやわらかな光が落ちてくる。この屋根は南面に向かって高くなっていて、その下にハイサイドライトで自然光を取り入れていて、全体を見たときにより屋根がより軽やかな印象になるようにした。
筋交いでできる開口部とHP シェルでできる曲線の屋根は、木造で成り立つ構造であると同時に、本施設を特徴づける意匠と一体になったシンボリックなデザインである。